バンコクのインターナショナルスクールへ子どもを編入させれば、自然に英語が話せるようになり、国際的な教育も受けられる。
そのように期待して、インター校を選ぶ家庭もあるでしょう。
しかし、実際には授業を理解できない期間が続く、日本語の読み書きが弱くなる、帰国後の学習内容と合わない、学費以外の費用が想定以上にかかるなど、入学してから分かる課題があります。
一方で、「インター校は日本より学習レベルが低い」「日本人の友達と話すと英語が伸びない」と一括りにすることも正確ではありません。
インターナショナルスクールには、英国式、米国式、IBなど異なる教育課程があり、学校、学年、子どもの英語力、赴任期間、帰国後の進路によって、困りやすいことは変わります。
この記事では、バンコクのインター校へ入学・編入した家庭が直面しやすい7つの課題と、入学前・入学後にできる対策を整理します。
最終更新:2026年7月
先に結論
- 日常会話と授業を理解する英語力は別である
- 日本の学校と学ぶ内容・順序が異なる
- 日本語の読み書きは家庭で継続する必要がある
- 友人関係や文化への適応には時間がかかる
- 授業料以外の費用も確認する
- 学校名だけでなく教育課程・認定・支援体制を見る
- 帰国時期、編入、受験から逆算して準備する
インターナショナルスクールは学習レベルが低い?
インター校について、「日本の学校より算数が遅れている」「学習内容が簡単」という話を聞くことがあります。
しかし、特定の学年で同じ単元を扱っていないことだけで、学校全体の学習レベルを判断することはできません。
教育課程が違えば、学ぶ内容、順序、深さ、評価方法も異なります。
- 日本の学習指導要領に沿う学校
- 英国式カリキュラム
- 米国式カリキュラム
- 国際バカロレア・IB
- 複数の教育課程を組み合わせた学校
同じ年齢でも、日本では既に学んでいる単元をまだ扱っていないことがある一方、発表、探究、作文、実験、プロジェクトなどを多く行っている場合もあります。
大切なのは、「日本より上か下か」ではなく、子どもが今後進む教育制度とつながっているかです。
1.日常会話ができても授業を理解できない
英語で友達と遊べることと、英語で算数、理科、社会などを学べることは同じではありません。
入学後、日常的な会話には比較的早く慣れても、次のような学習言語には時間がかかる場合があります。
- 問題文の条件を正確に読む
- 理由や根拠を英語で説明する
- 長い文章を読み、要点をまとめる
- 教科特有の専門用語を理解する
- レポートや作文を書く
- グループ討議で自分の考えを伝える
- 教師からの細かな指示を聞き取る
授業中に静かに座っているため、問題なく適応しているように見えても、実際には内容をほとんど理解できていないことがあります。
入学前に確認したい英語支援
- EAL・ELL・ESLなどの英語支援があるか
- 週に何時間利用できるか
- 通常授業から抜けて受けるのか
- 追加料金がかかるか
- 英語支援を終了する基準
- 保護者へ進捗報告があるか
- 教科の授業中にも支援を受けられるか
英語支援クラスがあるだけで安心せず、実際にどのような時間割と指導になるのかを確認します。
家庭でできること
- 翌日の授業予定を一緒に確認する
- 教科で使う重要語句を事前に見る
- 分からなかった授業を子どもに責めずに聞く
- 学校のオンライン教材や連絡を保護者も確認する
- 担任や英語支援担当と定期的に状況を共有する
「英語環境へ入れれば自然に身に付く」と考えすぎないことが大切です。
理解できない時間が長く続くと、英語だけでなく、学習そのものへの自信を失うことがあります。
2.日本の学校と学習内容・順序が合わない
インター校と日本の学校では、同じ年齢でも学習する単元や順序が異なる場合があります。
例えば、算数・数学では、ある分野を日本より早く扱う学校もあれば、別の分野を後の学年で扱う学校もあります。
国語、社会、日本史、日本地理、漢字などは、インター校の通常授業では日本と同じようには学びません。
困りやすい状況
- 数年後に日本の公立小中学校へ戻る
- 日本の中学・高校受験を予定している
- 年度途中に帰国する可能性がある
- 日本の教科書に沿った試験を受ける
- 日本語で算数・理科の問題を解く必要がある
日本の学校で学ぶ内容と異なるからといって、インター校の教育が劣っているとは限りません。
ただし、日本へ戻る予定があるなら、どの単元に差が生じているかを家庭で把握する必要があります。
学習差を確認する方法
- インター校の年間カリキュラムを見る
- 日本の該当学年の教科書と目次を比較する
- 算数・数学の未習単元を確認する
- 漢字、国語、日本の社会科を継続する
- 帰国予定校や受験校の条件を調べる
- 必要なら日本語の塾や通信教育を利用する
すべてを二重に学ばせると子どもの負担が大きくなります。
帰国時期と進路から、本当に必要な分野を優先してください。
3.日本語の読み書きが弱くなることがある
家庭で日本語を話しているため、「日本語は問題ない」と考えることがあります。
しかし、日常会話ができることと、学年相当の文章を読み、考え、書けることは別です。
特に幼児期から小学校低学年は、文字、語彙、読書、文章表現など、母語の基礎を育てる時期です。
起きやすい変化
- 漢字を読むことはできても書けない
- 日本語の長文を読むことを嫌がる
- 作文で使える語彙が少なくなる
- 抽象的な内容を日本語で説明しにくくなる
- 算数や理科の日本語問題を理解しにくくなる
- 同学年向けの本を難しく感じる
海外子女教育振興財団も、インター校や現地校に通う場合、特に母語形成期の子どもについて日本語の保持・伸長へ配慮し、それ以上の年齢でも読書、作文、通信教育、補習教育などで日本語学習を継続することを案内しています。
家庭で続けたい日本語学習
- 毎日または週に数回、日本語の本を読む
- 学年に合った漢字を少しずつ学ぶ
- 日記、手紙、感想などを書く
- 日本語でニュースや出来事を話し合う
- 日本の教科書や通信教材を利用する
- 必要に応じて日本語塾やオンライン指導を利用する
英語と日本語の両方を高い水準で伸ばすには、時間と継続した支援が必要です。
英語の宿題で疲れている子どもへ、日本の全教科を追加するのではなく、国語・漢字・算数など優先順位を決めます。
4.友人関係と文化への適応に時間がかかる
インター校には、異なる国籍、言語、文化的背景を持つ子どもが通っています。
多様な環境は大きな学びになりますが、入学直後から誰とでも自然に友達になれるとは限りません。
子どもが困りやすいこと
- 遊びや会話へ入るタイミングが分からない
- 冗談や暗黙のルールを理解できない
- 昼食や休み時間を一人で過ごす
- グループ活動で発言できない
- 母語が同じ子どもだけで集まる
- 自分の文化や名前について質問される
- 以前の学校との違いに疲れる
日本人の友達と過ごすこと自体は悪いことではありません。
自分の言葉で話せる相手がいることは、慣れない環境での安心につながります。
問題は、日本人同士でいることではなく、本人が望んでいるのに英語を使う活動へ参加できない、授業を理解できない、孤立している状態が続くことです。
学校へ確認したいこと
- 新入生を支えるバディ制度があるか
- 休み時間の様子を教師が確認しているか
- 学級でのグループ分けへ配慮があるか
- カウンセラーやウェルビーイング担当がいるか
- いじめや差別への相談手順
- 保護者へどのように連絡されるか
家庭で見たい変化
- 登校前に腹痛や頭痛を訴える
- 眠れない、食欲が落ちる
- 学校の話を避ける
- 突然「英語が嫌い」と強く言う
- 自分は頭が悪いと話す
- 長期間、友達の名前が一人も出てこない
このような状態が続く場合は、「英語環境だから仕方ない」とせず、担任、英語支援担当、カウンセラーへ相談してください。
5.授業料以外の費用が想定以上にかかる
インター校の教育費を比較するとき、年間授業料だけを見てしまうことがあります。
学校によっては、授業料とは別にさまざまな費用が必要です。
確認したい費用
- 出願料
- 入学金・登録料
- 施設費・開発費
- 保証金・デポジット
- EAL・ELLなどの英語支援費
- スクールバス代
- 給食費
- 制服・体育着
- パソコン・タブレット
- 教材・オンラインサービス
- 校外学習・宿泊行事
- クラブ・課外活動
- 試験料
- 卒業関連費用
授業料が会社補助の対象でも、英語支援、バス、給食、端末、課外活動までは補助されない場合があります。
会社へ確認したいこと
- 年間の補助上限
- 入学金・施設費の扱い
- 英語支援費の扱い
- バス・給食・制服の扱い
- 兄弟それぞれの補助額
- 学校変更時の再入学金
- 保護者が立て替える金額
- 為替換算の方法
入学前に、学校から1年間に必要となる費用の一覧を受け取り、勤務先の規程と照合します。
6.有名校という理由だけでは選べない
学校名、知名度、校舎の豪華さ、口コミだけでは、子どもに合う学校か判断できません。
インターナショナルスクール協会のISATも、特定の学校のランキングや推薦は行っていません。
また、ISATへの加盟と、外部機関による学校認定は同じものではありません。
学校選びで確認したい項目
- 採用している教育課程
- 学校が取得している認定
- 認定の有効期間
- 対象年齢・学年
- 英語支援の内容
- 学習支援や特別な配慮
- 教師の在職期間や交代状況
- 児童生徒の安全を守る方針
- いじめ・差別への相談手順
- 進学実績の見せ方
- 退学・転校時の記録発行
タイのインターナショナルスクールでは、学校運営の認可に加えて、認められた海外認定機関やタイの品質評価に関する確認が重要です。
ただし、認定を受けているだけで、すべての子どもに合う学校だと保証されるわけではありません。
学校見学で見ること
- 授業中の子どもの表情
- 教師が子どもの発言をどう扱っているか
- 英語が十分でない子どもへの支援
- 休み時間や昼食時の様子
- 図書館、保健室、カウンセリング
- 保護者への連絡方法
- 通学時間とスクールバス
見学用に準備された施設だけでなく、実際の教室や子どもの様子を可能な範囲で確認します。
7.帰国後の編入・受験準備を後回しにしやすい
インター校で充実した生活を送っていても、本帰国が決まると、次の問題が一度に出てくる場合があります。
- 日本のどの学年へ編入するか
- 学習していない単元をどう補うか
- 漢字や日本語作文をどう補うか
- 成績表や在籍証明をどう取得するか
- 帰国生入試の資格を満たすか
- 年度途中に編入できる学校があるか
- 海外で取得した英語力をどう維持するか
日本の公立小中学校へ帰国する場合は、原則として年齢に応じた学年へ編入することになります。
ただし、日本語力や学習状況について特別な事情がある場合の対応は、教育委員会や学校と相談することになります。
帰国前に用意したい書類
- 在籍証明書
- 成績表・レポートカード
- 履修した科目と教育課程
- 出席状況
- 英語力を示す資料
- 学校の認定や教育課程が分かる資料
- 推薦状や教師の所見
- 予防接種・健康記録
必要な書類は、帰国先の学校や受験校によって異なります。
本帰国が決まってからではなく、遅くとも帰国の半年から1年前には、候補校の条件を確認し始めます。
帰国生入試で確認したいこと
- 海外在住期間
- 帰国後の経過期間
- 在籍していた学校種別
- 出願学年
- 英語資格
- 日本語・国語・算数・数学の試験
- 作文・面接
- 専願・併願条件
「インター校に通っていれば帰国生入試で有利」と一律に考えることはできません。
学校ごとに出願資格と試験内容が異なります。
インター校が合いやすい家庭
課題があるからといって、インター校を避けるべきという意味ではありません。
次のような家庭では、選択肢になりやすいでしょう。
- 子ども本人が英語環境へ前向きである
- 英語支援を含む学校の体制を確認している
- 数年以上の海外滞在を予定している
- 帰国後も国際的な教育課程を続ける予定がある
- 家庭で日本語学習を支えられる
- 学費と追加費用を継続して負担できる
- 子どもの様子を学校と定期的に共有できる
慎重に検討した方がよい家庭
- 数か月から1年程度で帰国する可能性が高い
- 日本の受験が近い
- 子ども本人が英語環境を強く拒否している
- 英語支援の内容が不十分である
- 家庭で日本語学習を続ける余力がない
- 授業料以外の費用を把握できていない
- 保護者が学校との英語連絡を確認できない
一つ該当したから不可能ということではありません。
どの部分へ追加支援が必要になるかを、入学前に確認するための項目です。
入学前に学校へ質問したい20項目
□ 採用している教育課程は何か
□ 学年の決め方と基準日はいつか
□ 入学時にどのような試験・面談があるか
□ 英語力が不足していても入学できるか
□ EAL・ELL支援の内容と期間
□ 英語支援に追加料金がかかるか
□ 通常授業中の支援があるか
□ 日本人児童生徒の在籍状況
□ 学習支援や特別な配慮へ対応できるか
□ 学校が取得している認定
□ いじめ・差別・安全上の相談手順
□ カウンセラーや保健室の体制
□ 保護者との連絡方法
□ 授業料以外の年間費用
□ バス・給食・制服・端末の費用
□ 退学・転校時の返金条件
□ 成績表・在籍証明の発行方法
□ 日本へ帰国した児童生徒の進路例
□ 学校見学や体験授業が可能か
□ 入学後、最初の面談はいつ行われるか
入学後90日間の確認ポイント
最初の2週間
- 登校を極端に嫌がっていないか
- 学校で助けを求める相手を知っているか
- 昼食やトイレなど基本的な生活に困っていないか
- 時間割と持ち物を理解できているか
1か月後
- 授業の大まかな内容を説明できるか
- 英語支援が予定どおり行われているか
- 休み時間に一緒に過ごす相手がいるか
- 宿題へ過剰な時間がかかっていないか
- 睡眠や食欲に変化がないか
3か月後
- 英語支援の進捗が共有されているか
- 教科内容をどこまで理解しているか
- 本人が学校で安心して過ごしているか
- 日本語学習を無理なく継続できているか
- 今の学校を続けるために必要な支援は何か
入学した以上、最低1年は我慢しなければならないという決まりはありません。
子どもの心身や学習に強い影響がある場合は、学校と相談し、支援の追加や転校を検討します。
転校を検討した方がよい可能性がある状態
- 長期間、授業内容をほとんど理解できていない
- 必要な英語支援を受けられていない
- 登校拒否や体調不良が続いている
- いじめや差別への対応が不十分である
- 子どもの特性に必要な支援を提供できない
- 帰国後の進路と教育課程が大きく合わない
- 学費を継続することが難しい
転校は失敗ではありません。
現在の環境と子どもの状態を見直し、より適した学び方へ調整する判断です。
学校選びで迷ったときの相談先
海外子女教育振興財団では、家庭の教育方針、赴任地、赴任期間、子どもの年齢などに合わせ、出国前から帰国後まで教育相談を行っています。
インターナショナルスクールの制度、学校選び、英語支援、日本語保持、帰国後の進路なども相談できます。
インター校の仕組み、教育制度、入学試験、EAL・ELL、転入手続などを扱うオリエンテーションも案内されています。
関連する記事
日本人学校とインター校を総合比較
バンコクの学校選び|日本人学校とインターナショナルスクールを10項目で比較
補習・受験・インター生向けの塾
バンコクの日本人向け学習塾を比較する
教育費と会社補助
バンコク駐在の教育費はいくら?学校・バス・塾と会社補助を整理
日本人学校の詳しい情報
バンコク日本人学校ガイドを見る
まとめ|英語だけでなく、現在と帰国後の学びをつなげる
バンコクのインターナショナルスクールには、異なる文化や価値観の中で学び、英語を使いながら探究する機会があります。
一方、入学するだけで自然に英語力が伸び、日本語や帰国後の学習にも困らないわけではありません。
授業を理解するための英語支援を確認する。
日本の学校との学習内容の差を把握する。
日本語の読み書きを家庭で継続する。
友人関係と心身の変化を見守る。
授業料以外の年間費用を確認する。
学校の教育課程、認定、支援体制を確認する。
帰国時期と進路から逆算して準備する。
インター校か日本人学校かという二択だけで考えず、子どもの年齢、性格、英語力、赴任期間、帰国後の進路に合う学び方を選んでください。
主な情報確認先
・International Schools Association of Thailand
・海外子女教育振興財団
・文部科学省
教育課程、入学条件、英語支援、学費、学校認定、編入条件は、学校や年度によって変更されます。入学・転校・帰国前に、学校と関係機関の最新情報をご確認ください。