タイへ家族帯同で移住した駐在妻が、現地で仕事や副業を始めたいと考えることがあります。
日本の会社の仕事をオンラインで続ける。日本人向けに料理や語学を教える。アクセサリーや焼き菓子を販売する。ブログやSNSから収入を得る。
いずれも小規模なら問題ないように見えるかもしれません。
しかし、タイで外国人が働く場合は、収入額や知人相手かどうかではなく、滞在資格、労働許可、仕事内容、報酬、勤務場所などを確認する必要があります。
家族帯同用のビザを持っているだけで、自由に仕事ができるとは限りません。
この記事では、タイ駐在妻が現地就職、教室、物品販売、在宅ワーク、リモート勤務などを始める前に確認したいポイントを整理します。
最終更新:2026年7月
先に結論
- 家族帯同用のNon-Immigrant Oだけでは、原則として就労できません
- ビザと労働許可は別の制度です
- 少額、現金、知人相手、自宅での活動でも自己判断しないでください
- 無償の活動でも、内容によっては許可の確認が必要です
- 日本企業のリモート勤務も自動的に問題ないとは限りません
- 仕事内容によっては外国人が従事できない職種があります
- 就労許可だけでなく、所得税や勤務先の規程も確認します
- 活動開始前に雇用局、入国管理、勤務先、専門家へ確認してください
タイのビザとワークパーミットは別のもの
最初に理解したいのは、タイに滞在できることと、タイで働けることは別だという点です。
ビザ・滞在許可
タイへ入国し、一定期間滞在するための資格です。
駐在員の配偶者や子どもは、家族帯同を目的とするNon-Immigrant Oなどで滞在することがあります。
ワークパーミット・労働許可
外国人がタイで一定の仕事を行うための許可です。
一般的な就職では、雇用主、職種、勤務地などに基づいて手続きを行います。
ビザを持っているから働ける、会社から給料をもらわなければ働いていない、という判断はできません。
基本の考え方
「タイに住める資格」と「タイで仕事をする資格」を分けて確認します。
家族帯同用のNon-Immigrant Oで働ける?
駐在員の配偶者が取得することの多いNon-Immigrant Oは、家族に帯同してタイへ滞在するための資格です。
タイ外務省は、一般的なNon-Immigrant O保有者について、タイ国内での就労を認める資格ではないと案内しています。
そのため、現地企業への就職、副業、教室運営、販売活動などを始める場合は、現在の滞在資格のままでよいのか、就労用の資格や労働許可が必要かを確認しなければなりません。
「少額の副業なら大丈夫」とは限らない
次のような説明を耳にすることがあります。
- 月に数千バーツだから仕事ではない
- 友人から材料費だけ受け取っている
- 現金払いだから分からない
- 日本人だけを相手にしている
- SNSで本名を出していない
- タイの銀行口座を使っていない
- 自宅で行っているから店舗ではない
しかし、収入が少ないこと、活動場所が自宅であること、報酬を日本の口座で受け取ることだけで、就労許可が不要になるとは判断できません。
有償で継続的にサービスや商品を提供している場合は、活動内容を具体的に説明し、関係機関へ確認してください。
無許可で働いた場合の現在の罰則
タイ労働省雇用局は、外国人が労働許可なく働いた場合、または認められた範囲を超えて働いた場合について、次の罰則を案内しています。
- 外国人本人:5,000~50,000バーツの罰金
- 国外退去の対象
- 処分後2年間、労働許可を申請できない場合がある
無許可の外国人を雇った雇用主にも、外国人1人につき10,000~100,000バーツの罰金が案内されています。
再犯の場合は、さらに重い罰則や外国人雇用の禁止が課される場合があります。
「見つからなければ問題ない」という考え方は避けてください。
活動の規模ではなく、開始前に必要な手続きが完了しているかを確認します。
外国人ができない、または条件が付く仕事もある
タイでは、外国人の就労が禁止または制限されている職種があります。
タイ労働省雇用局は、外国人が原則として従事できない仕事として、露店販売、タイ式マッサージ、観光ガイド、理美容、秘書業務、一定の仲介業務、法律サービスなどを案内しています。
職種名だけでなく、実際に行う作業が対象になるかを確認する必要があります。
例えば、会社では別の職種として採用されていても、実際には許可された内容と異なる仕事をしている場合、問題になる可能性があります。
駐在妻が注意したい活動の例
以下は、許可が不要だと決めつけず、活動開始前に確認した方がよい例です。
日本人向けの料理・菓子教室
- 参加費を受け取る
- 材料費へ利益を上乗せする
- 定期的に自宅で開催する
- SNSで受講者を募集する
- 完成品を販売する
趣味の集まりと事業活動の境界を、自分だけで判断しないでください。
アクセサリー・雑貨・衣類の販売
- タイで仕入れた物を販売する
- ハンドメイド作品を販売する
- バザーやイベントへ出店する
- SNSやECサイトで注文を受ける
- 購入者へタイ国内から発送する
物を作る作業、販売、集金、発送など、複数の活動が関係する可能性があります。
家庭教師・語学・音楽レッスン
- 日本人の子どもへ家庭教師をする
- 日本語や英語を教える
- ピアノや習字などを教える
- 自宅や生徒宅で報酬を受け取る
- オンラインと対面を組み合わせる
教育活動であっても、報酬を受け取る場合は就労に関する確認が必要です。
ベビーシッターや送迎
- 知人の子どもを預かり報酬を得る
- 学校や習い事の送迎を有償で行う
- 定期的に家事や育児を代行する
知人同士の助け合いと、継続的な有償サービスは分けて考えます。
撮影・講演・イベント出演
- 現地イベントで講演料を受け取る
- 広告や動画へ出演する
- 撮影や制作業務を行う
- ワークショップを開催する
単発であっても、必要または緊急の短期業務として届出が必要になる場合などがあります。
「一日だけだから不要」と決めつけないでください。
無償のボランティアなら許可は不要?
給料を受け取らないボランティアであっても、すべて自由にできるとは限りません。
タイのビザ区分には、NGOや慈善団体などでの無償活動を目的とする区分があり、団体の書類や関係機関の確認が必要になる場合があります。
次のような活動では、受入団体へ確認してください。
- 学校や施設で継続的に指導する
- 団体の業務を定期的に担当する
- イベント運営を行う
- 物品販売や募金活動を行う
- 交通費や謝礼を受け取る
善意の活動であっても、外国人の就労・滞在制度とは別に扱えないことがあります。
日本の会社の仕事をタイから続ける場合
日本の勤務先から給料を受け取り、タイの顧客を相手にしないリモートワークであれば、タイとは関係がないと考える人もいます。
しかし、本人がタイ国内に滞在しながら継続的に業務を行う場合は、現在のビザ、就労制度、税務、勤務先の海外勤務規程を確認してください。
確認する項目
- 現在の滞在資格でリモート勤務が認められるか
- DTVなど別のビザが適切か
- タイでの労働許可が必要か
- 勤務先がタイからの勤務を認めているか
- 情報セキュリティーや個人情報の問題
- タイで恒常的施設などの問題が生じないか
- タイと日本の所得税
- 社会保険や労災の扱い
「給料が日本から支払われるため大丈夫」とは限りません。
勤務先の人事・法務・税務担当者と、タイ側の専門家へ確認してください。
リモートワーカー向けのDTV
タイには、デジタルノマド、リモートワーカー、外国人専門職、フリーランサーなどを対象とするDestination Thailand Visa・DTVがあります。
公式案内では、雇用証明、雇用契約、業務実績、一定額以上の資金証明などが必要とされています。
DTVは5年間有効の複数回入国ビザで、1回の入国につき最長180日の滞在が案内されています。
ただし、DTVを取得できるか、現在の家族帯同資格からどのような手続きが必要か、家族の滞在や勤務先の福利厚生へ影響するかは個別に確認する必要があります。
DTVが存在することと、現在のNon-Oでリモート勤務できることは別です。
自分の働き方に合う資格を、活動開始前に確認してください。
SMART Visaなどの例外
一部のSMART Visaでは、主申請者の配偶者に、通常とは異なる就労上の扱いが認められる場合があります。
ただし、SMART Visaの種類によって条件が異なり、すべての駐在員配偶者が対象になるわけではありません。
夫の会社がBOI企業であることや、夫が特別なビザを持っていることだけで、自分も自動的に働けるとは判断しないでください。
ブログ・SNS・YouTubeの収益化
ブログ、SNS、YouTubeなどから広告収入や紹介料を得る場合も、単に趣味の発信とは言い切れない場合があります。
確認したい活動
- 広告収入を受け取る
- 企業からPR報酬を受け取る
- 商品を無償提供されて紹介する
- アフィリエイト報酬を受け取る
- オンラインサロンや有料記事を販売する
- 動画編集や投稿代行を請け負う
- タイの店舗や企業から案件を受ける
収入の振込先が日本であっても、本人がタイで制作・営業・投稿などを行っている場合は、就労と税務の両面を確認してください。
特にタイ国内の企業や店舗から依頼を受ける場合は、契約前に専門家へ相談します。
タイの所得税にも注意する
タイ歳入局は、暦年中に合計180日以上タイへ滞在する人を、原則としてタイの税務上の居住者としています。
タイ源泉の所得だけでなく、国外所得をタイへ持ち込む場合などに申告・課税が関係する可能性があります。
ただし、所得の発生時期、送金時期、雇用関係、日タイ租税条約などによって扱いは異なります。
記録しておきたいもの
- タイへの入国日・出国日
- 仕事を行った場所
- 報酬の発生時期
- 報酬の支払者
- 日本とタイの銀行口座
- タイへ送金した時期と金額
- 日本で支払った税金
- 契約書、請求書、領収書
税務上の居住地と、就労許可は別の問題です。
税金を納めれば無許可就労が合法になるわけでも、労働許可があれば税務確認が不要になるわけでもありません。
夫の勤務先へ確認した方がよい理由
配偶者が働くことについて、夫の勤務先への報告が必要な場合があります。
影響する可能性があるもの
- 家族帯同ビザのスポンサー
- 海外医療保険
- 住宅補助
- 教育費補助
- 赴任手当
- 会社の副業・利益相反規程
- 家族の安全管理
- 税務申告
配偶者の就労自体を禁止していなくても、会社が事前申請を求めている場合があります。
隠して始めるのではなく、人事担当者へ、働き方、勤務先、報酬、予定期間を説明して確認してください。
働き始める前の確認手順
1.活動内容を具体的に書き出す
- 何をするのか
- 誰を相手にするのか
- どこで行うのか
- 報酬を受け取るのか
- 誰から受け取るのか
- 週に何時間行うのか
- 商品販売や発送を行うのか
2.現在のビザを確認する
パスポートのビザ、入国スタンプ、滞在延長の根拠を確認します。
3.夫の勤務先へ確認する
家族帯同、保険、福利厚生、副業規程への影響を確認します。
4.タイ労働省雇用局へ確認する
仕事内容、雇用形態、勤務場所を伝え、必要な労働許可や手続きを確認します。
5.入国管理またはタイ大使館へ確認する
現在の滞在資格でよいか、ビザ変更や新たな申請が必要かを確認します。
6.税務を確認する
タイの税理士や、海外勤務に詳しい日本側の税務専門家へ相談します。
7.すべて整ってから活動を開始する
申請中だから始めてよいとは限りません。
いつから働けるのかを、書面や正式な説明で確認してください。
相談時に用意したい情報
□ パスポート
□ 現在のビザ・滞在許可
□ 夫のビザとワークパーミット
□ 夫の勤務先情報
□ 自分が行いたい仕事内容
□ 雇用契約または業務委託契約
□ 勤務場所
□ 報酬額と支払者
□ 顧客がいる国
□ 商品販売や発送の有無
□ 予定する勤務時間
□ タイ滞在日数
□ 日本とタイの収入・送金方法
信じない方がよい説明
- ほかの駐在妻もやっているから大丈夫
- タイ人名義にすれば問題ない
- 小遣い程度なので仕事ではない
- 無料にして寄付を受け取ればよい
- 日本の口座ならタイには分からない
- 現金で受け取れば記録が残らない
- 日本人コミュニティ内だけなら通報されない
- 一度だけだから許可はいらない
知人やSNSの体験談ではなく、現在の制度と自分の活動内容を関係機関へ確認してください。
問い合わせ先
タイ労働省雇用局
外国人の労働許可、許可された職種、申請方法について確認します。
- 雇用局ホットライン:1694
- 労働省ホットライン:1506・2番
タイ入国管理局
現在の滞在資格、滞在延長、資格変更について確認します。
- 入国管理局ホットライン:1178
タイ政府e-Visa
Non-Immigrant Visa、DTVなどの現在の申請区分を確認します。
電話や窓口では、活動内容を具体的に伝えてください。
「副業できますか」だけではなく、何を、誰に、どこで提供し、どこから報酬を受け取るのかを説明します。
今すぐ働かない場合のキャリア維持
現在の滞在資格や家庭の状況から、すぐに仕事を始めない選択もあります。
報酬を伴わずに検討しやすい準備
- オンライン講座で資格や知識を学ぶ
- 英語・タイ語を学ぶ
- 帰国後の仕事に必要な情報を集める
- 履歴書・職務経歴書を更新する
- 以前の勤務先や同僚との関係を保つ
- 再就職の時期と条件を整理する
ただし、実習、無償業務、企業の仕事を手伝う活動などが就労に当たる可能性もあるため、具体的な活動を始める場合は確認してください。
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まとめ|「少額だから」ではなく、始める前に許可を確認する
タイ駐在妻が働くこと自体が、すべて禁止されているわけではありません。
必要な滞在資格、労働許可、職種、税務などを整えれば、働ける可能性があります。
しかし、家族帯同用のビザを持っているだけで、自由に副業できるわけではありません。
ビザと労働許可を分けて確認する。
少額、現金、自宅、知人相手でも自己判断しない。
日本企業のリモート勤務も事前に確認する。
外国人が従事できない職種を確認する。
夫の勤務先と福利厚生への影響を確認する。
タイと日本の税務を確認する。
正式に許可されてから活動を始める。
ほかの駐在妻が行っているかどうかではなく、自分のビザ、仕事内容、契約、収入の受け取り方に基づいて、関係機関へ確認してください。
主な情報確認先
・タイ労働省雇用局
・タイ外務省
・タイ入国管理局
・タイ歳入局
・タイ投資委員会
・タイ政府e-Visa
この記事は一般的な情報を提供するもので、個別の法律・ビザ・税務判断を行うものではありません。制度、罰則、申請条件は変更される場合があります。仕事や副業を始める前に、タイの行政機関、勤務先、資格を持つ法律・税務の専門家へご確認ください。
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